歯周病治療

■歯槽膿漏と歯周病ってちがうの?
歯槽膿漏(しそうのうろう)は、歯周病の症状の一つです。歯槽膿漏=(イコール)歯周病と捉えられることも多いようですが、厳密には歯周病は、細菌によって引き起こされる歯や歯ぐきの病気である「歯肉炎」と「歯周炎」の総称です。病名としては歯周病が正解です。患者さんに説明しやすいため、歯槽膿漏と表現する場合も多いです。

日本人の場合、歯肉炎は10~20代前半ですでに60%のかたがかかっているといわれ、50才代でおおよそ80%の人がかかっているといわれるほど、多くの方が悩んでいる歯の病気です。だれもがかかっている病気だからといって軽視していると最後には取り返しのつかないことになってしまう怖い病気です。

血圧が最高180ありますと言われれば驚く方も、歯周ポケットが8mmありますと言われても、血圧ほど驚かないし命には関係ないと思うはずです。歯科医師にとっては同じぐらいなのですが、実際問題歯周疾患で亡くなったとはだれも言いません。しかし最終的死亡原因の肺炎のかなりの割合を占めているのが口腔内の細菌なのです。サイレントキラーといっても過言ではないと思います。心臓疾患や未熟児出産(死産も含む)や最近注目のメタボリックシンドロームにも影響しているのは皆様ご存じのことと思います。

歯周病は予防できます。また、早期発見、早期治療がもっとも大切なキーポイントとなりますから、歯が痛くなくても、半年に一回は診察したほうがいいと言われています。(健康な歯と歯ぐきであれば、定期検診は痛くもなんともない、むしろリラックスできる癒しの場となるはずです。)

■歯周病の原因
歯周病の原因は、お口の中にいる細菌です。さらにその中で、歯周病菌と呼ばれる菌が歯周病の原因となっています。むし歯菌も歯周病菌も、歯垢(プラーク)と呼ばれるネバネバした細菌のかたまりの中にすんでいます。ネバネバしているので、いろんな細菌がくっつきやすくなっています。(とりもちみたいですね。)

さらにネバネバした歯垢が石灰化して硬くなると、歯石と呼ばれるようになります。この歯石の表面はザラザラしているので、そこにも歯垢がつきやすくなります。歯垢の段階なら歯ブラシでこすれば取れるのですが、歯石になってしまうと歯ブラシでは取れませんので、歯医者さんで除去するようになります。

歯周病にならないためには、口の中の細菌を減らせばいいわけで、むし歯と同じく、やはり歯ブラシできちんと歯を磨くのが有効なのですが、歯周病になるのにはこれ以外にもいくつか原因があると言われています。

歯周病の原因1…喫煙
タバコを吸うと、血管が収縮して血流が悪くなるので、歯周病が進みやすくなると言われています。

歯周病の原因2…糖尿病
体の抵抗力が低下するため、歯周病も悪化することがあると言われています。最近は相互関係が注目されています。重症の糖尿病が歯周治療を平行することで改善されてきたデータも報告されています。

歯周病の原因3…女性ホルモンの変化
思春期や妊娠したとき、あるいは更年期など、女性ホルモンが急激に変化するときに、ホルモンの影響で歯周病になりやすくなると言われています。

歯周病の原因4…ストレス
ストレスによる歯ぎしりや、ストレスによる体の抵抗力の低下などにより、歯周病になりやすくなると言われています。

歯周病の原因5…食生活の乱れ
柔らかいものや甘いものばかり食べていたり、ダラダラと飲食し続けていると、歯垢ができやすくなります。また、栄養が偏ると、体の抵抗力が低下して歯周病になりやすくなります。

歯周病の原因6…歯並びの悪さ
歯みがきをしても、毛先が行き届かないところにだけ歯垢がついたままになってしまうことがあります。

歯周病の原因7…口呼吸
口呼吸の弊害はいろいろなところで挙げられているようですが、口の中が乾燥するため、歯周病にもなりやすくなると言われています。

こうしてみると、自分で気をつけられそうな項目がたくさんありますね。歯だけでなく全身の健康を守るためにも、自分自身の食生活や嗜好、癖などを見直して、正しい歯みがき生活をしましょう!

■歯周病の予防方法
歯周病にならないために、あるいは歯周病をこれ以上進行させないために、何をしたらいいのでしょうか?

先ほど書きましたように、歯周病の原因は歯垢の中にいる細菌です。細菌が減れば歯周病になる可能性も低くなります。細菌を減らすには、歯垢を取り除くことが大切です。歯垢がなくなれば、歯周病だけではなく、むし歯になる可能性もグッと低くなります。(一石二鳥ですね)

歯垢を取り除く方法、それは正しい歯みがきをすることです。

「え。毎日歯みがきしてますけど…。」
とおっしゃる方も多いと思いますが、それでもむし歯や歯周病が減らないのはなぜだと思いますか?

それは、きちんと(正しく)歯をみがけていないからに他なりません。

歯をちゃんとみがこうと思うと、意外と神経を使います。慣れの問題だと思いますが、鏡を見てじっくりゆっくりみがきながら、正しい歯みがきを体感してください。磨きあがった後の口の中は、清潔感いっぱいで本当に気持ちいいです。当院でもブラッシング指導をしていますので、ぜひ受けてみてください。

また、生活習慣を改善することも大切です。
先に書いた歯周病の原因となるものを一つずつ取り除いていってみてください。

細菌が原因だと分かっているのですから、その細菌(のかたまりである歯垢)を取り除くこと、そして、自分の体そのものを健康に保って、細菌に負けない状態にすることが大切です。

歯周病をきっかけに、あなた自身の生活や健康をぜひ見直してみてくださいね。

■歯周病の治療法
今なってしまっている歯周病は、正しい歯みがきや生活改善でその進行を止める、あるいは遅らせることができても、根本的には治癒しません。ひどい歯周病になってしまったら、歯医者さんで治療してもらう必要があります。当院では、歯周病の患者さまには以下のような手順で治療を行ないます。

1)応急処置
応急処置が必要な場合には行ないます。歯肉が腫れている場合には、腫れている部分を切って膿を出すことがあります。

2)ブラッシング指導(プラーク・コントロール)
的確に歯垢を取り除くための、正しい歯みがきの仕方をお教えします。(ブラッシング指導と呼びます。)新しい患者さんに合った歯ブラシをお買い求めいただき、歯科衛生士と並んで一緒に歯みがきをします。

歯みがきと表現しますが、タイルをブラシでこするような問題ではありません。力任せにあちことこすればいいわけではありません。磨くことにこだわっていますが英語はよくわかりませんが磨くはポリッシュですよね。ブラッシングは歯茎のマッサージも含まれますし、歯周疾患の場合は歯というより歯と歯茎の問題になります。虫歯予防なら歯ですが、境目が刷掃されてなければ何の効果もないのです。歯と歯茎の堺の部分を歯ブラシで刷掃しても表側と裏側だけで、上手く刷掃されておよそ60点です。なぜなら歯と歯の間が刷掃されてないと点数的には50点ですよね。これも実際には癖があったり刷掃しづらいところもあるもので思ったほどは刷掃されてないものです。ブラッシングはとても大切なことです。ブラッシングと歯磨きを同じに思っていただいて結構ですが、ポリッシングとは思ってもらいたくないのであえてここで説明させていただきました。

3)歯石除去(スケーリング)
歯垢が石灰化してかたまってしまった歯石は、プロが取り除くのが、一番安全で確実です。むし歯や歯周病の温床となってしまうので、歯石があったらすみやかに取り除きましょう。

4)スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
目に見えない部分(歯ぐきと歯の境目=歯周ポケットの奥)に歯石がある場合は、局所麻酔をして歯石を除去します。歯垢や歯石によって汚くなった病気のセメント質も除去して、ツルツルに仕上げます。処置後多少歯茎がしみるようなこともあります。

5)歯周外科手術
歯石を除去したりしても歯周病が治りきらない場合は、歯周外科手術をします。歯肉を切って歯槽骨からはがし、SRPで取りきれなかった奥の歯石や感染したセメント質を直視して除去し、ツルツルにします。

6)メンテナンス
歯周病は、歯医者さんでの治療が終わってからが大事です。せっかく取り戻した健康を維持しましょう。毎日の正しい歯みがきとと規則正しい生活、定期検診が必要です。

こうして見ると、症状が軽いうちは時間もお金もかけずに治すことができますが、症状が重くなると時間もお金もだいぶかかってしまいます。時間もお金も大切ですが、他ならないあなた自身の大切な体のことですから、自分でできるお手入れは毎日自分でやって、数ヶ月に一度の定期検診でチェックしましょう!