滅菌・院内感染対策

■滅菌・院内感染対策について
「手術をするわけでもないのに、歯科医院で滅菌や消毒にそこまでこだわるの?」とおっしゃるかもしれません。

通常の歯科治療では手術をすることはありませんが、治療の内容によっては多少出血を伴うことがあります。そのときに、もし治療器具の滅菌や消毒が不十分だと、前の患者さんに使った器具を介して、B型肝炎やC型肝炎、HIVなどに感染する可能性が高いことがわかってきました。

歯科医院の滅菌消毒業務には、診療報酬がありません。一生懸命やればやるほど経費がかさみ、歯科医院の経営は苦しくなっていきます。しかし、患者さんに安心できる治療、安全な治療を受けていただきたいという思いから、当院では、滅菌消毒をはじめとする院内感染予防に力を入れています。スリッパも使いまわしではありません。

■当院の滅菌・院内感染対策
当院では、診療器具や器械について、すべて患者さんごとに オートクレーブなどにより滅菌を行なっています。
診察基本セットの「歯科用ミラー・探針・ピンセット」は、すべて滅菌しています。また、麻酔針は、すべてディスポーザブル(使い捨て)です。

また、当院ではデンパックスという口腔外バキュームを使用しています。

普通、バキュームというのは、歯の治療をするときに歯科衛生士や歯科助手が持っている吸引器のことを指しますが、当院では、口腔外吸引装置(バキューム)も併用しています。

口腔外バキュームは、歯科治療中に出る歯の削りカスや金属片、患者さんの血液や唾液など、細菌汚染物質となるものを確実に素早く吸引し、患者さんの健康を守るためのものです。

歯を削ったとき、目に見えないくらい細かい粉やチリが、空気中に飛び散ります。口の中に入れて吸い込む口腔内バキュームだけでは、それらの細かなチリをすべて吸引することができません。

あなたも、知らない誰かの歯の削りカスや血液や唾液を吸い込んでいるのは気持ちが悪いと思います。さらに、歯科治療では院内感染にも気を配るべきです。口腔外バキュームは、治療中に飛び散った粉塵だけでなく、空気中に漂っている他のチリもきれいに吸引してくれるので、院内を清潔に保ち、治療の安全性を高めてくれます。この装置の欠点をあえてあげれば 吸引力が強いので音が大きくそれが怖いという患者さんもおります。音だけですので我慢してください。また当医院のものは簡易的移動式と違い配管してあり 外に排出するようになっており より感染予防には効果があります。これにより換気も行われます。

当医院の診療各ユニットは半個室になっていてプライバシーも守られ 感染予防でも有利です。下写真 中央に見えるのが口腔外吸引装置です。

 

■院内感染予防システム
患者さんに使用する器具は、患者さんごとにすべて滅菌処理しています。
(滅菌とは、すべての細菌を死滅させることです。)

滅菌処理しているもの
・診察基本セット(歯科用ミラー・歯周ポケット用探針・ピンセット)
・手術器具
・タービンのバー(歯を削るドリルの先端部分です。)
・リーマー、ファイル(歯の根の治療をするときに、細菌に感染した歯質を掻き出す器具です。)

使い捨てにしているもの
・注射針
・麻酔液
・グローブ(ゴム手袋)
治療の際座るユニットも一回ごとに消毒しています。

 

■滅菌と殺菌と消毒の違いをご存知ですか?

消毒消毒
病原微生物をある程度殺すこと。

殺菌殺菌
病原微生物を殺すこと。消毒よりは強いのですが、まだ不十分です。

滅菌滅菌
物質中の全ての微生物を殺すこと。完全な処理です。

 

ウイズコロナ

だ液によるコロナウイルス検査が海外で広がり、それに伴い国内でも口腔内の管理がコロナウイルスの感染予防になることが知られてきました。コロナウイルスが体内に入って感染するためには、ACE2(アンギオテンシン変換酵素)という酵素が必要ということがわかっています。この変換酵素が、ウイルス表面のスパイクたんぱく質と結合して感染します。このACE2が多数存在するのが肺胞であり、そのためコロナウイルスに感染した患者さんは、肺炎によって重篤な症状になります。

このACE2は口腔内の唾液腺開口部の上皮にも多数存在することが報告されています。唾液腺からは、常にだ液が流出しているために、口腔内にコロナウイルスが入っても容易に感染しません。しかしだ液量の少ない人は感染リスクが高くなります。複数の薬を服用している有病者 だ液腺の機能低下症、不潔な口腔内環境ではだ液量が少なくなり、口腔内に入ったコロナウイルスに感染しやすくなります。

口腔内でコロナウイルスが増加すると、誤嚥やむせこんだ時に だ液とともにウイルスが気管に入ります。結果的に年齢にかかわらず、重篤なウイルス性肺炎の症状を呈します。免疫が暴走するサイトカインストームという言葉も有名になりました。まさに口腔内の管理やメインテナンス(PMTC)などで口腔内を清潔に保つことが感染予防につながることが明らかになってきました。ウイズコロナの時代だからこそ、我々に与えられた仕事だと思って 患者さんのための 口腔内管理に努力します。